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Topics of sporting goods

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体育館を避難所に!先生が知っておきたい平時と災害時の設備と課題 

2025年09月11日

 

 


体育館を避難所に!先生が知っておきたい平時と災害時の設備と課題 


 

■目次

①なぜ学校の体育館が避難所になるのか?   1

 1.多くの公立学校が避難所に指定されている現状   2

 2.気候変動がもたらす体育館の役割の変化   2

②【平時編】安全で快適な学習環境としての体育館   2

 1.夏の熱中症リスクを軽減するための工夫   2

 2.設備がなくてもできる熱中症対策   2

 3.WBGT(暑さ指数)計の活用法(追加)   3

 4.暑さ対策製品タイプの比較   3

 5.冬の厳しい寒さを克服するための工夫   3

③【非常時編】命を守る避難所としての体育館   3

 1.災害フェーズごとに求められる必須設備   4

 2.プライバシーと衛生環境を確保するための留意点   4

④「いつもの場所」を「もしもの拠点」にするための備え  4

 1.日常の学校備品を災害時に転用するアイデア  4

 2.地域コミュニティと連携した防災体制の構築   5

⑤まとめ  5

 

 

 

地震や台風などの災害時、多くの地域で学校の体育館が避難所として活用されています。先生にまず求められるのは、児童・生徒の安全を守ることです。そのうえで、平時から体育館の環境や設備を把握し、いざという時に地域住民を受け入れられるよう備えておく姿勢が大切です。

 

本記事では、体育館が避難所に指定されている背景や役割の変化を解説しつつ、夏冬の気候に応じた熱中症・寒さ対策、WBGT計の導入事例や暑さ対策製品の比較、さらには災害時に求められる設備や運用の工夫まで幅広く紹介します。

 


①なぜ学校の体育館が避難所になるのか?


 

学校の体育館が避難所として機能する理由は、地域住民にとって最も身近で信頼できる公共施設であるからです。全国の公立学校の9割以上が避難所に指定されており、災害時には地域住民の生命を守る最前線の拠点となります。

 

しかし、近年の気候変動により、体育館に求められる役割は大きく変化しています。従来の「緊急時の一時的な避難場所」という位置づけから、平時の教育活動においても安全で快適な環境を提供し、災害時にはより質の高い避難生活を支える総合的な防災拠点へと進化が求められているのです。

 

1.多くの公立学校が避難所に指定されている現状


全国の公立学校33,285校のうち、実に30,349校(91.2%)が避難所に指定されています。学校施設が高い指定率を誇る理由は、地域住民にとって身近で認知度が高く、一定の敷地面積と建物の堅牢性を備えているためです。

 

避難所には「指定緊急避難場所」と「指定避難所」の2つの機能があり、前者は災害の危険から逃れるための施設、後者は一定期間滞在し避難者の生活環境を確保するための施設です。体育館は広い空間を活用して、両方の機能を担う重要な拠点として位置づけられています。

 

参考:文部科学省|避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査結果についてお知らせします

 

2.気候変動がもたらす体育館の役割の変化


近年の台風や豪雨の頻発・激甚化により、学校施設では窓や屋根の損壊、浸水、停電、断水などの被害が増加しています。平時においても猛暑による熱中症リスクが高まり、教育活動に支障をきたすケースが報告されています。

 

このような状況を受けて、体育館には従来の「緊急時の避難場所」という役割に加え、平時から地域住民の健康と安全を守る拠点としての機能が求められるようになりました。しかし、20255月時点で公立小中学校の体育館におけるエアコン(冷房)設置率は22.7%にとどまっており、十分な空調設備が整っていない地域が多いのが現状です。空調設備の充実や適切な温度管理など、年間を通じて安全で快適な環境を提供できる施設への転換が急務となっています。

 


②【平時編】安全で快適な学習環境としての体育館


 

体育館は単なる運動施設ではなく、児童生徒が年間を通じて安全に学習活動を行うための重要な教育環境です。特に近年の猛暑や厳寒といった気候変動の影響により、平時の体育館環境の改善は緊急課題となっています。

 

夏場の熱中症対策から冬場の寒さ対策まで、適切な設備投資と運用の工夫により、学習効果を最大化しながら健康リスクを最小限に抑えることが可能になります。同時に、これらの平時の設備充実は、災害時の避難所機能向上にも直結するため、一石二鳥の効果を発揮します。

 

1.夏の熱中症リスクを軽減するための工夫


体育館での熱中症対策は、設備面と運用面の両輪で取り組むことが重要です。近年の猛暑により、避難所としての体育館環境は深刻な課題となっており、各自治体では独自の対策を講じています。

 

【停電時も動作するLPガス空調の事例】

大阪府箕面市立箕面小学校では、熊本地震での避難所運営の教訓を踏まえ、画期的な空調システムを導入しました。当初、都市ガスは災害時の復旧に時間がかかることを懸念し、早々に候補から外しました。電気エアコン、輻射式エアコンとのコスト比較を経て、最終的にLPガス対応のガスヒートポンプエアコンと専用発電機を組み合わせたシステムを採用。この選択により、災害時にも早期供給可能な環境を実現し、体育館での避難生活者100150人の快適性を確保しています。

 

【自治体全域での統一配備による効率化】

静岡県藤枝市では、2018年の猛暑を受けて抜本的な対策に乗り出しました。児童生徒の熱中症対策と夏場の災害時避難所環境の改善を目的に、市内全ての小中学校27校(17小学校・10中学校)に対してスポットクーラーを各校4台ずつ、計108台を配備しました。この配備により、どの学校が避難所として開設されても一定水準の冷房環境を提供でき、地域住民の安心につながっています。

 

【建物性能向上による根本的解決】

京都府京都市立柊野小学校では、建物そのものの断熱性能を向上させるアプローチを採用しました。体育館の外断熱、複層ガラスの設置、地域産のみやこ杣木を使用した内装により、館内温度の安定化を実現。この取り組みは初期投資こそ大きいものの、長期的な省エネ効果と災害時の快適性確保を両立させた模範的な事例として注目されています。

 

※大型冷風扇など、体育館の暑さ対策製品をお探しの方は、下記よりご覧になれます。

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2.設備がなくてもできる熱中症対策


冷房設備が整備されていない体育館でも、基本的な熱中症対策を徹底することで安全を確保できます。水分補給は最も重要な対策で、のどの渇きを感じる前にこまめに水分を摂取する必要があります。

 

スポーツドリンクなどの塩分や糖分を含む飲料は、水分の吸収がスムーズ失われた塩分の補給にもつながります。また、直射日光を避けるため日陰での活動を心がけ、冷却グッズの活用も効果的です。

 

特に高齢者や子どもは体温調節機能が未発達であるため、周囲の大人が体調変化に注意を払うことが重要です。

 

参考:環境省|熱中症環境保健マニュアル2022

 

3.WBGT(暑さ指数)計の活用法


WBGT計(湿球黒球温度計)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標で、人体の熱収支に影響する湿度、日射・輻射、気温の3つを総合的に測定します。

 

単位は気温と同じ摂氏度()ですが、値は気温とは異なり、より正確な熱中症リスクを判断できます。WBGT計には基本型と電子式があり、屋外では地上1.5m程度の高さに設置し日射の影響を測定し、屋内では活動場所の代表的な位置に設置し湿度の影響を重視します。

 

WBGT31以上で運動原則中止、28以上31未満で厳重警戒(激しい運動は中止)、25以上28未満で警戒(積極的に休憩)と段階的に対応します。

 

【実践的な活用事例】

東京都豊島区では区内14か所でリアルタイム測定し、タブレット画面で警戒レベルを表示。10万人超への注意喚起を実現しました。川崎市では高齢者住居20軒で暑熱環境調査を実施し、エアコン使用実態との関係を分析。吹田市では学校8施設で測定し、体育館では30を超える危険な状況を把握しました。災害時の避難所でも被災者の安全管理に活用されています。

 

参考:

環境省 熱中症予防情報サイト|暑さ指数(WBGT)について

環境省|地域における熱中症対策の先進的な取組事例集

 

4.暑さ対策製品タイプの比較


暑さ対策機器には主にスポットクーラーと気化式冷風機があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。スポットクーラーは外気を本体に取り込み、内部で冷却した冷気をダクトから送風する仕組みで、特定のスポットを効果的に冷却できます。

 

一方、気化式冷風機は水の気化熱を利用して周囲の温度より体感で約5℃低い涼風を送風します。設置面では、スポットクーラーは排熱処理が必要ですが冷却効果が高く、気化式冷風機は設置が容易である反面、湿度が上昇する特性があります。体育館の規模や使用目的に応じて最適な機器を選択することが重要です。

 

5.冬の厳しい寒さを克服するための工夫


冬場の体育館は床冷えや室温低下により、児童生徒の健康や学習活動に大きな影響を与えます。茨城県つくば市立秀峰筑波義務教育学校では、地中熱換気システムを導入し、外部から吸気した空気地下埋設配管通すことで、夏は涼しく冬は暖かい地中熱を利用した省電力システムを実現しています。

 

床冷え対策として、大・小アリーナともに床下の断熱材を強化し、小アリーナではクッション性の高い塩ビシート材を採用しています。内装木質化や暖房機器、毛布等の備蓄も寒さ対策として重要で、これらの取り組みは災害時の避難所利用時にも高齢者や体調不良者の負担軽減に直結します。

 


【非常時編】命を守る避難所としての体育館


 

災害時の体育館は、地域住民の生命を守る最後の砦となります。災害発生から避難所解消までの期間は、救命避難期、生命確保期、生活確保期、教育活動再開期の4つの段階に分かれ、各段階で求められる機能は大きく異なります。

 

初期段階では最低限の安全確保が中心となりますが、時間の経過とともに避難生活の質向上やプライバシー確保、衛生環境の維持が重要課題となります。体育館を効果的な避難所として機能させるためには、これらの段階的ニーズを見据えた計画的な設備整備と運営体制の構築が不可欠です。

 

1.災害フェーズごとに求められる必須設備


災害時の体育館では段階的に異なる設備が求められます。救命避難期から教育活動再開期まで、各フェーズで必要となる設備は以下の通りです。

 

ライフライン

必要な設備・機能

役割

電気

非常用発電機、太陽光発電、蓄電池

照明、情報通信、医療機器、冷暖房

耐震性貯水槽、プールの水の浄化装置

飲料水、生活用水、トイレ用水

ガス

LPガス設備、ガス変換器

炊き出し、暖房、給湯

トイレ

マンホールトイレ、簡易トイレ

衛生環境の維持、感染症予防

情報通信

防災行政無線、衛星電話、Wi-Fi

安否確認、災害情報の収集・発信

 

浸水対策として上層階への設置が重要で、民間事業者との協定により災害時の燃料調達体制を構築することが求められます。

 

2.プライバシーと衛生環境を確保するための留意点


体育館での避難生活では、プライバシー確保と衛生管理が避難者の尊厳と健康を守る重要な要素となります。居住スペースでは間仕切りを設けてプライバシーを保護し、段ボールベッドの活用により床の硬さを軽減することが効果的です。

 

衛生面では消毒スペースの設置と適切な換気が感染症予防に不可欠で、高齢者、障害者、妊産婦等の要配慮者には専用スペースを確保する必要があります。バリアフリー化の推進により、車いす利用者や高齢者が安全で円滑に利用できる環境整備も重要な配慮事項です。

 


「いつもの場所」を「もしもの拠点」にするための備え


 

学校は児童生徒にとって日常的に過ごす「いつもの場所」ですが、災害時には地域住民の生命を守る「もしもの拠点」へと変貌します。この二つの役割を両立させるためには、平時から災害時を想定した準備が欠かせません。

 

既存の学校備品を災害時に効果的に転用するアイデアを蓄積し、地域コミュニティとの連携体制を構築することで、迅速で効果的な避難所運営が実現します。

 

日頃から使い慣れた設備や備品を災害時にも活用できるよう工夫することで、限られた資源を最大限に生かした防災体制の確立が可能になります。

 

1.日常の学校備品を災害時に転用するアイデア


災害時には、学校にある日常の備品を効果的に活用することで、避難所運営を円滑に進めることができます。体育館のマットは避難者の寝具として活用でき、秀峰筑波義務教育学校では避難所開設訓練において教員と児童が協力してマットを体育館に敷き詰める作業を実施し、必要な人数や所要時間を把握する取り組みを行っています。

 

プライバシー確保のための簡易個室は、跳び箱や平均台をパーテーションの重しとして活用し、教室の机と椅子にシートを組み合わせることで構築できます。

 

給食室の調理器具は炊き出し用に転用でき、大東小学校では家庭科室にIHとガスコンロの両方を設置し、どちらか一方が停止した場合でも調理を継続できるよう配慮されています。長岡市立東中学校では中越地震の経験を活かし、生徒が調理実習でパッククッキング(耐熱ポリ袋調理)を体験しており、この調理方法は水を節約でき、一つの鍋で多種類の料理を同時に調理できる優れた手法です。

 

ボールかごは分別ゴミ箱として活用でき、実際に柊野小学校の避難所運営訓練で実践されています。理科室のアルコールランプも暖房器具として利用可能ですが、火災リスクを伴うため理科教員による厳格な安全管理が必要不可欠です。これらの転用方法を年2回の防災訓練で実際に練習し、所要時間や人員配置を事前に確認しておくことで、実際の災害時に迅速かつ効果的な対応が可能になります。

 

参考:内閣府|避難所運営ガイドライン

 

2.地域コミュニティと連携した防災体制の構築


学校の避難所機能を最大化するには、防災担当部局、学校設置者、自主防災組織、地域住民の連携体制構築が不可欠です。平時から学校施設利用計画や運営マニュアルを作成・周知し、関係者間で共通理解を得ることが重要になります。

 

地域住民を主体とした避難所運営訓練や炊き出し訓練を継続的に実施することで、学校の防災機能や備品の使用方法を確認できます。災害時には教職員が教育活動の再開準備に専念できるよう、避難所運営を地域主体へ円滑に移行する計画を事前策定しておく必要があります。

 

地域コミュニティの結束が強いほど避難所運営も円滑に進むため、平常時の関係構築が鍵となります。

 


まとめ


学校の体育館を効果的な避難所として機能させるためには、平時からの計画的な準備が不可欠です。猛暑や厳冬といった気候変動に対応できる設備投資を行い、災害時には段階的なニーズに応じた運営体制を構築することで、地域住民の生命と健康を守る拠点として機能します。

 

日常の学校備品を災害時に転用するアイデアを蓄積し、地域コミュニティとの連携を深めることで、限られた資源を最大限に活用した防災体制の確立が可能になるでしょう。体育館の二重機能を高めることで、安全で質の高い教育環境と災害時の安心できる避難所を同時に実現できます。